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貝の王様『鮑(アワビ)』

夏に旬を迎える、貝の王様『鮑(アワビ)』。なかなか頻繁には食べることがない高級食材の一つなのではないでしょうか。レストランや結婚式のコースなんかに出てくると、ラッキー!と、ついつい思ってしまいます。  そんな『鮑』は、実は古くからの歴史があったのです。『鮑』に隠された秘密とはなんでしょう。

『鮑』の名前の由来

 『鮑』は7〜9月を旬とする、ミミガイ科の大型の巻貝です。貝殻を見てみても、いわゆる巻貝という感じではなく、二枚貝の片方が取れたような形をしていますよね。そんな『鮑』の形から、万葉集ではある歌が読まれていて、そこで『鮑』は “貝の片思い“と言われています。 “鮑のように私の心も片思い”。ロマンチックですね。 そこで、“会わないでわびしい”、“合わないで開く”の略から『鮑』となったという説があります。  また、『鮑』の別名は“海の怠け者”。動きがたいそう鈍く、夜にしか餌を食べないというところからきています。しかし、移動するときは意外と早く、触覚、目、あしを出して夜間には1日に50〜100mを移動するようです。

『鮑』の特徴 種類とエサ

 世界には約100種類ほどの『鮑』の仲間があり、そのうち日本には10種類が分布しています。その中でも、“クロアワビ”、“エゾアワビ”、“マダカアワビ”、“メカイアワビ”の4種類が食用とされており、一般的に市場に流通しているのは、“クロアワビ”と“エゾアワビ”の2種類です。北海道から九州までの水深が50mほどの岩礁域に生息しています。 『鮑』は夜になると動き出し、ワカメ、アラメ、カジメ、コンブなどの海藻を、歯舌というヤスリのような歯で削り取って食べています。プロの海女さんたちは、岩に残された海藻が食べたられた跡を見つけて、漁をするそうです。  また、『鮑』は殻に特徴があります。『鮑』の殻には数個の穴が並んで開いています。この穴は、エラ呼吸をするためであったり、吸い込んだ水や排出物、精子や卵を放出せるためのものです。『鮑』の殻は内側から層がどんどん重なって、1年で3cm、3年で8cm、5年で13cmと大きくなっていきます。そのため、殻の穴も成長に従って古いものからふさがり、また新しいものが形成され、常に4〜5個の穴が開いています。

『鮑』の旬

 『鮑』の産卵は、どの種類も海水温が20度程度になったときに始まります。そのため、暖かい海で育つ“クロアワビ”や“メガイアワビ”、“マダカアワビ”は、海水温がさがって20度になることの晩秋〜冬にかけて産卵します。一般的に、産卵前の魚介類は身体に栄養を蓄えているため、産卵前の時期が旬となります。ですから、“クロアワビ”たちの旬は7〜9月となります。  一方、“エゾアワビ”は北海道や東北地方の冷たい海に生息しているため、海水温が上がってきて、20度を超え始める夏〜秋に産卵します。ということで、“エゾアワビ”の場合は旬が春〜初夏となります。  この“エゾアワビ”は“クロアワビ”の北方系亜種とされており、“エゾアワビ”を暖かな海で育てると“クロアワビ”と見分けがつかないほどに、味も見た目も似ると言われています。むしろ実際、現在“クロアワビ”として出回っているものは、本来、北海道、東北で取れる“エゾアワビ”を暖かい海へ移植したものが多いのです。 そんな“エゾアワビ”は、養殖も盛んで価格も“クロアワビ”に比べると、若干安いとのことです。

『鮑』の歴史

 お祝い事や、贈り物に欠かせない“のし”紙。この、“のし”は『鮑』のことを意味しているのはご存知でしょうか。元々は『鮑』を薄く切って伸ばして“のし”は作られていたんです。 古来より、『鮑』は長寿の縁起物とされ“熨斗鮑(のしあわび)”が神様へのお供え物として用いられています。この“熨斗鮑”は、鮑の肉を薄くはいで乾燥させ、細くのして伸ばして、干物にして作られています。時代とともに、紙で代用するようになりましたが、現在でも伊勢神宮に献上する“熨斗鮑”は昔と変わらない製法で作られています。

『鮑』の産地

 身がコリコリして歯ごたえがあり、噛むほどに磯の香りと甘みが広がる『鮑』。  伊豆半島、紀伊半島、三浦半島、房総半島、静岡県御前崎、和歌山県大王埼、淡路島、長崎五島列島などが産地として有名です。その中のブランド鮑をご紹介

三重県志摩の国 あわび

 伊勢神宮にも献上されている『鮑』で、三重ブランドに認定されている逸品。  伊勢志摩では鮑漁の歴史が古く、2000年も前から海女さんたちが活躍しています。伊勢神宮に献上されるほか、妊婦さんが食べると目の綺麗な子供が生まれてくるという言い伝えもあるそうです。コリっとして引き締まった身を噛むと、うまさが広がります。伊勢志摩サミットでも食べられた逸品です。

房州黒あわび

 千葉県のブランド水産物にも認定されている“房州黒あわび”。市場で出回っている『鮑』でも、最高級品といわれています。肉厚でしっかりした歯ごたえと、濃厚な旨味が特徴。刺身は絶品ですし、干しアワビとしても人気です。肝も濃厚でねっとりとしています。12cmを超えるおおきさのものが多い。

輪島海女採りアワビ

石川県輪島市の舳倉島(へぐらじま)は、海女の漁でも有名で現在でも200名ほどの海女さんが活躍しているそうです。栄養豊富な海で育った、海藻を食べて育った輪島の鮑は、身が厚く、歯ごたえや食感、甘味や旨味をしっかりと味わうことができます。

『鮑』の栄養素

 『鮑』には、良質なタンパク質、ビタミンB、ミネラルを含むことから、疲労回復に効果が見込めます。また、豊富に含まれるタウリンはインスリンの分泌作用を促進したり、血圧を正常に保つ作用、血中の善玉コレステロールを増やす作用、心筋のはたらきを正常に保つ作用などがあります。また、高たんぱく質低カロリーでダイエット食にも適しています。 なかなか、高級で手を出しづらい食材ではありますが、せっかく食べるなら、一番美味しい旬の時期を逃さず楽しみたいですね。

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