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食材紹介

どじょうは夏が旬のスタミナ食材。江戸庶民が慣れ親しんだ味

どじょうを使った料理といえば、東京浅草の「どぜう鍋」が有名ですが、その他にも金沢の「どじょうの蒲焼き」や、讃岐の「どじょううどん」など、各地に郷土料理として様々な形で伝承されています。

どじょうはうなぎに劣らぬ栄養価の高さで、江戸時代の頃から夏バテを防ぐ身近な食材として親しまれてきました。かつては田んぼや湿地などに豊富に生息していましたが、高度成長期にともなう水路のコンクリート化や農薬の使用などの影響によりその数は著しく減少し、現在市場に流通しているどじょうのほとんどは養殖物です。国産の天然物にいたっては、非常に貴重な高級魚として扱われています。

どじょうの栄養分と効能について

「どじょう1匹分の栄養価はうなぎ1匹分に匹敵する」と昔からいわれています。どじょうは骨ごと食べることが多いため、栄養分をそのまま取り入れることができるのも嬉しいポイントです。

◯豊富なミネラル・ビタミン類

カルシウムがうなぎの8倍以上あり、カルシウムの吸収を促すビタミンDも豊富です。貧血を防ぐ鉄分、代謝を促進するビタミンB2、細胞組織の成長に欠かせない亜鉛など、様々なミネラルをたっぷり含んでいます。

◯良質なたんぱく質

どじょうのたんぱく質は脂質が低いため、カロリーはうなぎの約3分の1です。高い栄養価をもちながら、低脂肪・低カロリー。どじょうはスタミナ食であるとともに、非常にヘルシーで栄養バランスの良い優れた健康食材といえます。

◯どじょうのぬめり成分

どじょうの特徴でもある体表のぬめり成分には、血液をきれいにし、免疫力を高め、細胞を活性化させる効果があるとされています。コラーゲンが含まれているので、美容にもよいです。

どじょうの主な食べ方・おすすめポイント

  • 丸鍋(まる)

    骨が柔らかくなるまで下煮した丸ごとのどじょうを、さらにササガキごぼうと一緒に濃いめのだしで煮込み、仕上げにネギの輪切りをたっぷりのせたもの。見た目のグロテスクさがあるため、通好みの品。

  • 抜き鍋(ぬき)

    背開きにして頭と骨を取り除き、ササガキごぼうの上に並べて割り下で煮たもの。割り下がひと煮立ちしたら、どじょうをひっくり返してネギの輪切りをたっぷりのせます。どじょうの骨が苦手な人や、どじょう初心者におすすめ。お好みで山椒や七味をかけて。

  • どじょうの柳川鍋

    背開きにして頭と骨を取り除き、ササガキごぼうの上に並べて濃いめのタレで煮て、玉子でとじたもの。

    名前の由来は、柳川という種類の土鍋を使ったからとも言われています。(諸説あり)

  • どじょうの唐揚げ

    片栗粉をまぶして、まるごと揚げたもの。小さなどじょうは唐揚げで食べるのが美味。スナック感覚で食べられ、骨は全く気になりません。どじょうの見た目が苦手な人にもおすすめです。

  • どじょうの蒲焼き(串焼き)

    どじょうを開いて串刺しにし、甘辛いタレをつけて蒲焼きにしたもの。脂肪分が少ないため、うなぎの蒲焼きよりもあっさりしています。

  • どじょう汁(どぜう汁)

    どじょうのみそ汁。香川県(讃岐)では、うどんを入れた「どじょううどん」が名物になっています。

  • どじょうの甘露煮

    照りが出るように、どじょうを骨が柔らかくなるまで甘辛く煮たもの。しっかりとした味付けはご飯にもお酒にも合います。煮詰めてあるので日持ちがします。


どじょうを調理するときの注意点

死んでいるどじょうは料理に使用しません。どじょうは「活けもの」を仕入れ、「生きたまま調理する」のが原則です。

◯泥抜きについて

どじょうは水田や湿地など、泥の中に生息しているため、食べるには「泥抜き」が必要です。ただし、食用として販売されているものは泥抜きしてあることがほとんどなので、購入の際には泥抜きの有無について確認しておきましょう。

活どじょうの保存方法(泥抜き済みの場合)

すぐに調理しない場合は、どじょうを生かしたまま保存しなければなりません。基本的にビニール袋に水と酸素が投入された状態で届くので、別の容器に移し替える作業が必要です。

事前準備として、どじょうを入れるための深い容器(平面積の広い不透明なもの)を用意し、井戸水、もしくはカルキ抜きをした水を半分くらいまで入れておきます。(水温15度~20度)

どじょうが届いたら速やかに、ビニール袋に入ったままの状態で、用意しておいた容器の水に1時間ほど浮かべ、互いの水温が同じくらいになるよう慣らします。

どじょうの様子が落ち着いてきたら、ビニール袋に入っている水ごと容器の中に放し、直射日光を避けて保管してください。

泥抜きが必要な場合

天然のどじょうを自分でつかまえて調理する場合、泥ぬきされていないどじょうは、必ず泥抜きを行います。

井戸水、もしくはカルキ抜きをした水を深い容器(平面積の広い不透明なもの)に入れ、その中で3日~1週間くらい泳がせておきます。(水温15度~20度)※使用する水は井戸水が好ましいですが、ない場合はカルキ抜きした水道水を使用して下さい。

◯カルキ抜きの方法

バケツに水道水を汲んで、日光(紫外線)の当たる場所に置いておきます。カルキ抜きにかかる時間は、夏の晴天時であれば2時間程度ですが、曇り空のときや紫外線の弱い時期では1日~2日くらいかかります。

活どじょうの下処理の基本

調理の際にどじょうが暴れないよう、お酒に浸して酔わせることで大人しくさせておきます。

▼手順

1. どじょうを深い鍋に入れ、脱出しないよう蓋をする。

2. 蓋を少しだけずらして、その隙間から、どじょうが浸るくらいの酒を注ぎ、すぐに蓋を閉める。

3. 5分ほど様子を見て、どじょうの動きが静かになったら蓋をとり、ザルにあける。

4. どじょうを軽く塩もみして、ぬめりを洗い流す。

※どじょうが大きい場合は、背開きにして内臓を取り除いた後、皮目を湯引きしてやると臭みがさらに抑えられます。

◯生食禁止。しっかり加熱すること

どじょうには顎口虫(がっこうちゅう)という寄生虫がいる可能性があります。そのため生食は避け、必ず加熱調理してください。

活どじょう(食用)の販売店・通販可能な仕入れ先の紹介

食材として一般的にはあまり馴染みのないどじょうですが、旬の時期には鮮魚店やスーパーなどで販売している場合もあります。

また、どじょうは釣りの餌用として売られている場合も多いので、購入の際は「食用」であることを確認しましょう。食用であれば、泥抜きしてあることがほとんどです。

以下では食用のどじょうが販売されている販売店・仕入先をご紹介します。

長良川どじょう

長良川の源流で育った、安心・安全な長良川どじょう。臭みがまったくなく、うなぎにも劣らぬ味で料理店への出荷もしています。注文を受け付けてからどじょうを捕獲し、きれいな清水で4~5日なじませてからの発送。食用と餌用の2種類のどじょうを販売しています。

大分どじょう吉野養殖場

コンクリート水槽による養殖のため、全く泥臭くありません。温水・暖房設備完備により一年中どじょうに最適な養殖環境を実現しています。地下80メートルからくみ上げた水を使用し、その水質は水質検査機関の検査済みです。泥を使用しない養殖のため病原菌の混入がなく、「安心・安全・高品質」などじょうを生産しています。

川魚の店【魚良-うおりょう-】

栃木県東部那須岳を水源とした那珂川でとれた天然どじょうを取り扱っているお店。天然のため販売できる量や時期に限りがあります。目安では、3月末ごろからとれだし、5月初旬から6月中旬が一番とれる時期とのこと。10月以降はとれなくなります。

天然物でありながら非常に良心的な価格。どじょうの管理方法が商品ページに丁寧に説明してあり、参考になります。

どじょう料理の老舗・専門店の紹介

どぜう駒形(浅草・渋谷)

享和元年(1801年)創業。関東大震災、第二次世界大戦をのりこえ、江戸の味を200年以上守り続けている老舗中の老舗です。「どじょう」は4文字で縁起が悪いからと、看板を「どぜう」と表記したのは初代当主・越後屋助七の発案。

人気はやはり「どぜうなべ」。甘味噌仕立ての味噌汁で骨が柔らかくなるまでしっかり下煮してあるのが特徴です。

浅草本店は地下1階、1階、2階とあり、それぞれに違った趣があります。特に1階は江戸時代の形をそのまま残したつくりになっていて、風情たっぷりです。

どぜう飯田屋(浅草)

画像出典元:どぜう飯田屋

創業は江戸末期の慶応年間。どじょう専門の店になったのは明治35年になってからです。5代にわたって続く、どじょう料理の老舗。飯田屋の割り下は、ほどよい甘辛さが特徴。テーブルに設置されたガスコンロを使い、自分好みの火加減に調節して味わいます。骨を取り除いた「ほねぬき鍋」はどじょう初心者にもおすすめ。

秋田県の美味しい伏流水で養殖されているどじょうを仕入れ、店の裏の井戸水で管理しています。

金沢名物どじょうの蒲焼「かばやき屋」

画像出典元:かばやき屋

金沢名物の「どじょうの蒲焼」は、金沢で昔から親しまれてきた金沢の伝統食。

ファン客の一人であった山内寛人さんが、先代大将からどじょうの蒲焼きのつくり方を受け継ぎ、県内のどじょうの蒲焼き販売において売上No.1の人気店に急成長したという、ドラマチックな背景を持つお店。国産のどじょうにこだわり、商品にはそれぞれ産地を明記しています。

先代大将が50年あまり継ぎ足しをして使ってきた秘伝のタレはしっかり受け継がれ、「かばやき屋」伝統の味を守っています。

【結びに】夏の風物詩、どじょうを是非メニューに

流通しているどじょうの多くは養殖物ですが、養殖が天然に劣るというわけではありません。むしろ国産の養殖物は「泥臭さがない」「骨が柔らかい」「安全」といった大きな特徴があります。

どじょうはヌメヌメして見た目がグロテスクなため、万人受けする食材とは言えませんが、ヘルシーでスタミナたっぷりな優れた健康食材です。

どじょう料理は江戸から続く夏の風物詩。自店舗のメニューにぜひ加えてみてはいかがでしょうか?

<参考サイト様>

(順不同)


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