逸品「食材」
山形牛は霜降り度合いに優れた銘柄牛。松坂牛/米沢牛との違いとは?
山形牛の歴史は古く、大宝元年(701)に牛馬の育成に関する規定として厩牧令(くもくりょう)が発布されたころにさかのぼります。農耕や運搬などの目的で置賜地域にて飼育のかたわら肥育を始めたところ、寒暖差のある四季のはっきりした山形の風土によって良質の肉が産出されるようになりました。
明治初期には、米沢学館に招請された英国人教師がそこで食した米沢黒牛のあまりの美味しさに驚愕。当地の肉牛を横浜に送ったことによってその肉質の良さが評判となりました。そしてそれを機に、山形県内における肉牛の肥育が広まっていったのです。
目次
山形牛とは?
画像出典元:高橋畜産グループHPより
山形牛の評判は明治初期の米沢に始まり、その後、県内各地で様々な銘柄牛が誕生していきますが、1962年、県内産肉牛の品質規格を統一するために定義づけられたのが「総称 山形牛」です。
山形牛はオレイン酸を豊富に含み、霜降り度合いに優れ、まろやかな味と肉質の良さが特徴。猛暑の夏と雪深い厳寒の冬が巡る山形の四季は、寒暖差が大きく、そこで育つ牛たちはきめ細かなサシの入った極上の肉質になります。
※オレイン酸は不飽和脂肪酸で融点が低く、牛肉の口どけの良さにつながるため、美味しさを表す指標の一つとして考えられています。山形牛はオレイン酸の含有率を特に基準に設けてはいませんが、平成21年度畜産試験場調査において、調査した枝肉約4,100頭のうち約3,200頭の枝肉が、オレイン酸の割合が55%以上であったという調査結果がでています。
総称 山形牛の定義
山形肉牛協会は、次の3つの基準を全て満たしたものを「山形牛」として認定しています。
1.山形県内において、最も長く肥育・育成された未経産および去勢の黒毛和種。
2.公益社団法人日本食肉格付協会が定める肉質4等級以上のもの。ただし、1の条件を満たし、肉質が3等級についても同様に取り扱う。
3.山形県および各行政機関で実施する放射性物質検査において放射性物質が「不検出」であること。
(引用)山形肉牛協会HP http://yamagata.lin.gr.jp/yamagyu2.htm
米沢牛/松阪牛の違いとは?
米沢牛
寒暖の差が厳しい盆地特有の気候、ミネラル豊富な雪解け水、麦やふすま、トウモロコシ、大豆などを原料にした良質な飼料によって、米沢牛のきめ細かいサシと脂の質の良い肉質が生まれます。
※米沢牛は山形牛よりもさらに厳しい条件で定義づけられていることが特徴です。全国屈指の黒毛和牛として、松坂牛・神戸牛と並んで日本三大和牛に数えられています。
米沢牛の定義
米沢牛銘柄推進協議会は、下記の条件をすべて満たしたものを米沢牛と認め、枝肉に証明印を押印するとしています。
1.飼育者は、置賜三市五町(※1)に居住し米沢牛銘柄推進協議会が認定した者で、登録された牛舎での飼育期間が最も長いものとする。
2.肉牛の種類は、黒毛和種の未経産雌牛とする。
3.米沢牛枝肉市場若しくは東京食肉中央卸売市場に上場されたもの又は米沢市食肉センターでと畜され、公益社団法人日本食肉格付協会の格付けを受けた枝肉とする。但し、米沢牛銘柄推進協議会長が認めた共進会、共励会又は研究会に地区を代表して出品したものも同等の扱いとする。また、輸出用は米沢牛銘柄推進協議会が認めたと畜場とする。
4.生後月齢32ヶ月以上のもので公益社団法人日本食肉格付協会が定める3等級以上の外観並びに肉質及び脂質が優れている枝肉とする。
(※1)置賜管内の三市五町:米沢市、南陽市、長井市、
高畠町、川西町、飯豊町、白鷹町、小国町
【令和2年3月28日取引分より改定】
(引用)米沢牛銘柄推進協議会HP
http://www.yonezawagyu.jp/03.html
松阪牛
最高級ブランド牛の代名詞とも言える松阪牛。きめ細かな美しいサシと、とろけるような柔らかな肉質、甘く上品な香りが特徴です。以前は肉質等級が最上級の5であることが必須条件でしたが、2002年の規約改定により「等級」の規定が定義から除外され、現在では等級4以下の松阪牛も流通しています。
松阪牛の定義
・黒毛和種、未経産の雌牛
・松阪牛個体識別管理システムに登録されていること
・松阪牛生産区域(旧22市町村)での肥育期間が最長・最終であること
※生後12ヶ月齢までに松阪牛生産区域に導入され、
導入後の移動は生産区域内に限る。
以上の条件をすべて満たし出荷されたものが松阪牛と定められています。
(引用)松阪牛協議会HP
https://www.city.matsusaka.mie.jp/site/matsusakaushi/matsusakaushitowa.html
一方、松阪牛には松阪牛の最上級を表す「特産松阪牛」という定義づけがさらにあり、その条件は『兵庫県で生まれた黒毛和種の未経産雌牛を、12ヶ月齢に達するまでに松阪牛生産区域に導入し、その後900日以上肥育した牛』というものです。
つまり「特産松阪牛」が特化している点は、山形牛や米沢牛よりも長期にわたって肥育されていることにあります。月齢でいうと約38ヶ月以上を必要とする「特産松阪牛」はその生産頭数が圧倒的に少なく、松阪牛全体の数パーセントしか存在しません。(平成27年度実績:松阪牛全体の約4%)
その希少性の高さから、特産松阪牛は「松阪牛の中の松阪牛」、「松阪牛のスペシャルグレード」と言われているのです。
※松阪牛として認められた肉には「松阪牛シール」が貼られますが、品質規格によってフレームの色が異なり、「特産松阪牛」と「等級5の松阪牛」は金、「等級4の松阪牛」は銀、それ以外は黒となっています。
山形牛のおすすめ部位と特徴
画像出典元:高橋畜産グループHPより
モモ
よく動かす部分のため脂肪が少なく、赤身中心の肉質ですが、山形牛のモモ肉は非常に柔らかいのが特徴。肉そのものを味わいたい人におすすめです。
ヒレ
1頭の牛から少ししか取れない希少部位で、運動量が少ないため非常に柔らかいのが特徴。クセのない上品な甘みがあり、肉の女王とも呼ばれます。
また、ヒレ肉中央の最も太い部分を「シャトーブリアン」といい、脂肪が少ないのに極上の柔らかさです。1頭から600~800グラムしか取れない超希少部位。
サーロイン
背中から腰あたりの肉。柔らかくて甘みもあり、ほどよい脂身でステーキにぴったりです。「ステーキの王様」といわれるくらい、人気の高い部位でもあります。
リブロース
肩ロースとサーロインの間の肋骨部分のこと。霜(サシ)が多く入っていて、肉質はきめ細やか。とろけるような味わいが特徴です。
肩ロース
首肉からリブロースが始まるまでの背中部分の肉。ほどよい柔らかさで、肉質のバランスの良さと濃厚な味わいが特徴。焼肉、すき焼き、しゃぶしゃぶなど、幅広い料理に向いています。
ランプ
腰から尻にかけた部分の肉のこと。赤身肉で臭みがなく、とても柔らかいのが特徴です。焼肉やローストビーフにおすすめ。
ミスジ
牛の肩から腕にある部位で、一頭からわずか3キロ程しか取れない希少部位。肉の中に大きな3枚の筋が入っていることから「ミスジ」と呼ばれるようになりました。独特の食感と柔らかさ、口どけの良さが特徴。焼きすぎるとパサパサになってしまうので注意してください。
山形牛の保存方法
すぐに使用しない場合は、小分けにしてラップで包み、密封袋に平らにして入れて冷凍保存します。このとき金属トレーなどにのせておくと、冷凍時間を短縮することができます。使用する際は、冷蔵庫へ移して解凍してください。
山形牛の仕入れ先
高橋畜産食肉株式会社 (山形)
食肉加工において独自のマイスター制度を導入し、肉を処理するスピード、断面の美しさ、整形の技術など、最高の技術を身に着けた職人によってのみ加工が成されています。
鮮度と安全性を最重視し、ISO22000を認証取得。プロトン凍結により細胞を破壊することなく、最高の状態を維持したまま発送することが可能です。
株式会社 中島商店(山形)
創業1898年の老舗食肉卸として、安心・安全・美味の山形牛を伝えていくことをモットーに掲げています。山形県の銘柄牛の中でも、特に高品質なものを厳選するとともに、国産和牛、輸入牛、国産豚肉なども取り扱っています。
日南食肉卸センター 株式会社 日南(東京)
信頼できる指定生産者が育て上げた資質豊かな国産牛、豚、鶏だけを取り扱っています。どんな細かい加工オーダーにも応えられる技術力を自負し、ブロックからスライスまで、開けたらすぐに使える状態に加工して発送しています。
結びに
牛肉の等級は、(社)日本食肉格付協会によって決められていますが、味そのものに対する評価項目はありません。格付け表記は、あくまでも見た目の評価であるという点を理解しておくことが大切です。A5ランクの肉が、必ずしも自分の口に合うとは限りません。霜降り度合いや脂肪の質を判定する指標の一つとして捉えておくとよいでしょう。
<参考サイト様>
山形県畜産協会 様
有限会社矢野畜産 様
肉匠もりやす 様
チイキイロ 様
(順不同)