食材紹介
オニオコゼは抜群の旨さを秘めた高級魚。味わい豊かに堪能したい
オニオコゼは「鬼のように醜い魚」というのがその名の由来。まるで岩のようなデコボコの皮肌に、つぶれたような顔がなんともユニークですが、その見た目に反し、とてもきれいな白身をしています。
品のある歯ごたえ、繊細な脂と甘みからなる食味。皮はプリプリ、肝も胃袋もすばらしく美味で、アラで作った味噌汁は極上。オニオコゼはフグにも劣らぬ抜群の旨さを秘めた魚であり、漁獲量の少なさも相まって、料亭や割烹旅館などでは高級魚として取り扱われています。
注意すべきは、背びれに毒腺をもった大きなトゲがあることですが、多くの場合は、背びれ部分を除去した状態で仕入れることが可能です。
今回はオニオコゼの特徴やおすすめの調理法、取り扱う際の注意点などについて紹介していきます。
目次
オニオコゼの生態
オニオコゼはスズキ目カサゴ亜科オニオコゼ科の魚。
オコゼには様々な種類がありますが、オコゼ類のなかで食用として一般的に流通しているのがオニオコゼです。
関東以南の太平洋、新潟以南の日本海、瀬戸内海、東シナ海などが分布地域で、暖かい海の岩礁や、浅瀬から水深200メートルくらいまでの砂泥底などに生息しています。泳ぎは得意ではなく、普段は砂の中などにじっと潜んで、小エビや小魚などを捕食しています。
オニオコゼの特徴
体長は平均で25センチ前後。頭部が大きくて胴体が短く、背びれには、毒棘(どくきょく)と呼ばれる鋭い毒のトゲが連なっています。トゲの毒はオニオコゼが死んだ後もそのまま残っているため、取り扱いには注意が必要です。
鱗(うろこ)はなく、皮は分厚くて弾力がありプニプニしています。体色は黒、茶、赤、黄など生息している場所によって異なり、赤いものが最も高値で取り引きされていますが、体色による味の違いはほとんどありません。
オニオコゼの栄養価と効能
オニオコゼの白身はヘルシーで低カロリー。良質なたんぱく質を豊富に含んでいます。皮にはコラーゲンたっぷり。唐揚げにして骨まで食べれば、カルシウムもしっかり補給できます。その他にも、成長を促すビタミンB2、皮膚や粘膜の健康に欠かせないビタミンB6、貧血予防に効果的なビタミンB12などが多く含まれています。
オニオコゼの旬について
オニオコゼは産卵期の5月~8月頃にかけて漁獲量が増えるため、築地などでは夏が旬として扱われることが多いですが、もっとも美味しい時期は真冬から春先にかけてで、その時期は脂を蓄えて肝も大きくなり一段と旨味が増します。漁獲の旬は夏、味の旬は冬といえるでしょう。
オニオコゼの刺毒に注意
オニオコゼの背びれのトゲには強い毒があり、うっかり手などに刺してしまった場合には、激しい痛みに一日中苦しむことになります。患部付近は猛烈に腫れ上がり、ひどい場合は痙攣、呼吸困難、アナフィラキシーショックなどを引き起こすこともあるので、トゲの処理がしていない個体を扱う際は注意が必要です。
※トゲの毒は切除した後もそのまま残っています。背びれのトゲを処分する際は、他者が誤って触ったりしないよう、新聞紙などに厳重に包んで捨てるなどの配慮をしてください。
応急処置について
トゲが刺さってしまった場合は傷口を水で洗い流し、45度くらいのお湯に30〜60分ほど浸すことが有効です。(やけどに注意)
オニオコゼの毒はたんぱく質性のため、患部を熱いお湯に浸して毒素を不活性化させることで痛みが少し和らぎます。ただしオニオコゼの毒は強力ですので、速やかに病院でも診てもらいましょう。
オニオコゼの下処理・さばき方の基本
1.背びれのトゲがそのままついている場合は、キッチンバサミやニッパーなどで背びれごとトゲを切り落とします。
※トゲの飛散、紛失に注意。飛び散ったトゲが目に入ったりしないよう注意してください。防護メガネなどしておくと
安心です。 2.オニオコゼには鱗がありませんが、汚れが多く付着しているのでたわしなどを使ってきれいに洗います。
3.背びれに沿って両側からV字に深めに切り込みを入れ、背びれを包丁で抑えながら、オコゼを反対側に引っ張るようにして背びれを根元から取り除きます。
4.頭を落としてエラを外したら、腹を開き、内臓を傷つけないようにして肝臓、胃袋、真子(卵巣)を取り出します。
※肝類は氷の入った塩水につけて血抜きしておきます。
5.身を大名おろしにします。
6.分厚い外皮は手で剥ぎとります。薄造りをする場合は、身についている薄い皮(身皮)を包丁で引いて取り除きます。
7.小骨を抜き、キッチンペーパーで余計な水分を拭き取ります。
オニオコゼのおすすめの食べ方・調理のポイント
刺身 (熟成)
締めたばかりの新鮮な食感を楽しむのもいいですが、3枚におろしてから冷蔵庫で一日寝かせたくらいのほうが旨味成分が増し、しっとりとした上品な甘みを堪能できます。ただこれは人それぞれ好みによるので、両方試してみるとよいでしょう。
※いわゆる魚の熟成は、適切な処置と衛生管理が必要不可欠です。さばく時点で既に鮮度の落ちているようなものは寝かせても傷むだけですので、速やかに食べてください。不十分な知識で熟成を行うことは食中毒の原因にもなるので避けましょう。
刺(湯引き)
オニオコゼの皮はブヨブヨした外皮と、身についている薄皮(身皮)とで二重になっています。 薄造りをする場合は薄皮を包丁で引きますが、薄皮をつけたままさっと湯引きして、厚めの刺身にするのもおすすめです。 プルプルとした薄皮の食感と上品な身の旨味を一緒に堪能することができます。
オコゼの唐揚げ
鮮度の落ちたものは唐揚げに。小さいサイズのものは、頭のついたままエラや内臓類をとって丸ごと揚げるのがおすすめ。
刺身で残った中骨や頭など、アラを使った唐揚げももちろん美味しいです。
160度くらいの低温でじっくり揚げるのがポイント。
オコゼのあら汁
オコゼのアラは抜群に美味しい出汁がでます。特に味噌汁は最高です。
■アラの下処理方法
1.アラは水洗いした後、粗塩をふってザルの中で15分ほど置いて生臭さを抜きます。
2.90度くらいの熱湯の中に入れ、アラの表面が白くなったら取り出します。
3.水を張ったボールに入れて、汚れや血合いを取り除き、水を切ります。
煮つけ・ちり鍋
冬の「寒オコゼ」は、煮つけやちり鍋がおすすめ。特に肝入りのちり鍋は、フグに劣らぬ絶品の旨さです。
外皮・薄皮・胃袋・肝は湯引きして楽しむ
オニオコゼをお造りにする場合は、白身だけだと量が少ないので、皮や胃袋を湯引きして細く切ったものを一緒に添えるとよいでしょう。皮はゼラチン質たっぷりでプリプリ、胃袋はコリコリとした食感を楽しめます。湯引きした肝はそのまま食べてもいいですが、醤油やポン酢に溶いて使うのも最高です。
新鮮なオニオコゼの見分け方・保存方法
刺身で食べるなら、活けものか活〆されたものを使います。皮に張りがあり、体の色が鮮明でエラの色が変色していないものを選びましょう。背びれが取り除かれている場合は、皮が剥がれている部分の身が透明感があるかどうかで鮮度を確認します。
また保存する場合は、下処理を済ませた状態で保存することが重要です。鮮度の落ちたものは必ず加熱調理しましょう。冷凍保存する場合は、3枚におろして水気をよく拭き取り、空気に触れないようラップで包んでチャック付きのフリーザーバックに入れます。できれば調理してから冷凍したほうがよいでしょう。
オニオコゼの仕入れ先
刺身で食べるなら、活けものか、適切に処理された活〆のものを仕入れる必要があります。まずは最寄りの市場へ出向き、オニオコゼの水揚げ状況などを実際に確認してみるとよいでしょう。
株式会社 海老仙(静岡県浜松市)
こちらの株式会社海老仙では浜名湖、舞阪港で獲れる魚介類を中心に卸売を行っています。
有限会社 播磨海洋牧場(兵庫県姫路市)
有限会社播磨海洋牧場では瀬戸内海の新鮮な天然魚介類を産地直送しています。(発送時の状態: 活〆、神経抜き)
有限会社 山米鮮魚(兵庫県美方郡)
有限会社山米鮮魚では山陰・日本海の新鮮な魚介類を全国各地に発送しています。社長自ら浜坂港に買い付けに行っており、毎朝フェイスブックにて競りの様子を報告しています。
結びに
似ている魚に「オニカサゴ」がありますが、オニオコゼとオニカサゴは別物です。オニオコゼには鱗がありませんが、オニカサゴには鱗があります。また、「カジカ」も姿が似ていますが、カジカはオニオコゼ科ではなくカジカ科であり、主に東北や北海道などでよく獲れます。さらに、東北地方などではカジカ類をオコゼと呼ぶことがあるため大変ややこしいです。
混同されることも少なくないため、購入の際はよく確認することをおすすめします。
<参考サイト様>
FISH FOOD TIMES 全日本調理指導研究所 様
日本料理 ゆるり 様
松山 京風一品料理 きよみず(和食)二代目の独り言 様
FoodsLink フーズリンク 様
FOODIE 様
親方の隠し部屋 様
Sushi – 江戸前のすし (寿司・鮨・鮓) / 究極の仕入れ・仕込み・レシピ 様
キッチンラボクッキンング 様
福井新聞 様
香川県 – 香川の魚 様
株式会社海老仙 様
八面六臂株式会社 様
魚殿 様
asksanin 山陰境港 様
手前板前 様
ぼうずコンニャクの市場魚貝類図鑑 様
カロリーSlism 様
(順不同)