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「食」トリビア

「鰹のたたき」と「鯵のたたき」の“たたき”って何?違いを知ってますか?

 

春頃になると“鰹(カツオ)のたたき”が登場し始め、少しすぎると、“鯵(アジ)のたたき”が食べごろになります。

春から夏ごろにかけて、寿司ネタとしても、「鰹」や「鯵」が出てきます。そして、「鰹」と「鯵」の食べ方と言ったら、“たたき料理”が代表的なのではないでしょうか。  

でも、この2つの“たたき料理”は見た目が全然違いますよね。

そもそも“たたき料理”とはどのような料理なのでしょうか?

それぞれどのような“たたき方の違い”があるのでしょうか?

そもそも“たたき”とは何を意味しているのでしょうか?

カツオとアジの旬の時期

鰹の旬は2度 3〜5月と8〜9月

  鰹は春先から太平洋を北上し、秋には南下することから、旬が2度あります。
  鰹漁は3月ころから九州南部で始まり、5月には静岡などの本州中部、8月〜9月になると宮城の三陸沖から北海道南部の方まで回遊します。そこで、3〜5月にかけてを1度目の旬とし、この時期に取れた鰹を「初鰹」と呼んでいます。

  一方、8月頃に北部から戻って来た鰹を、9月頃に三陸沖でとったものが「戻り鰹」と呼ばれます。
このとき、鰹は2度目の旬を迎え、11月頃にかけて九州まで南下して漁が終了します。
  卵からかえったカツオは、春になると黒潮に乗って、太平洋岸を西から東へ北上してます。そのため春先の「初鰹」は脂がほとんどなく、身が引き締まり、赤身でさっぱりした味が特徴になります。あっさり、さっぱりとした味わいを好む人に人気です。
また、春にとれる鰹は脂が少ないため、“たたき”に向いているとも言われています。
「戻り鰹」は黒潮に集まる小魚をたくさん食べ、南下して戻ってくる頃には丸々と太り、しっかりと脂が乗っていきます。そのため、初鰹の味とは違い、脂が乗ったピンクがかった色味になり、もちもちと弾力があり、濃厚な味わいが特徴です。  

鯵の旬は 4〜7月

  鯵には様々な種類が存在し、百数十種類存在すると言われています。
その中で、最も馴染みの深いは「マアジ」という品種だと思います。ここでは、この「マアジ」の旬をご紹介します。
鯵の旬、4月〜7月頃の初夏から夏。遅くての8月くらいまでが旬と言われています。
鯵の産卵期は1月〜11月と非常に長く、地域によって、時期がずれていきます。西日本では年明けから初夏、関東沿岸では初夏から夏、北海道では8月頃といったように、1年を通してどこかの海域で産卵をしているという状態です。
鯵は暖かい海を好み、北海道から東シナ海まで広い範囲に分布します。暖流に乗って、日本周辺を回遊しているため、九州地方では3月、駿河湾沖では4月、房総沖では5月、三陸沖では9月頃と、地域によって旬の時期が変わっています。
このような日本周辺を回遊する鯵は、体が黒っぽく、長い距離を泳ぎ回るため、全体的に細身で脂が少ないのが特徴です。

一方、回遊せず、日本沿岸の湾内や瀬に定着する鯵もいます。
これを瀬付き鯵といい、回遊しないので、産卵を控えた時期が、脂のよく乗った旬の時期となります。一般的な鯵の旬は、この瀬付きの鯵の旬です。瀬付きの鯵は、湾内や瀬周辺に住み着き、動き回らず、プランクトンなどのたくさんの餌を食べるため、回遊する鯵とは違い、脂が多く、全体的に丸々と太り、肉厚で、味もしまっています。
鯵は一年中とれ、食べることができますが、体が大きくなると、味が落ちてしまいます。ですから、秋から冬にかけては味がイマイチと言われています。

たたき料理とは…

 さて、本題です。そもそも“たたき料理”とはどのような料理なのでしょうか。
ご存知の通り、鰹のたたきは刺身のような切り身で、鯵のたたきは細切れになっている状態です。
まず、“たたき”とは、料理あるいは調理法を示す言葉とされ、また、この調理法の中で“たたき”は2種類に分けることができます。
それが… 『刻むたたき』と『炙るたたき』です。
刻むのが「鯵」で、炙るのが「鰹」というのは、何となく想像がつきます。 それでは、「鰹のたたき」と「鯵のたたき」の調理法を詳しく見ていきましょう・


鰹のたたきの作り方


1 柵状やブロックの鰹を、藁や炭火で炙る。藁はすぐに火が着き、火力が良いという点と、独特の風味がつくという点で、ベストとされています。また、表面は軽く焼く程度にして、中まで火を通さない火加減が大切です。
2 これを素早く氷水に入れ冷やします。
3 炙って冷やした鰹を一口大に切り分けます。
4 にんにくや生姜などの薬味と酢や塩などのタレをかけ、手や包丁でたたく。

ポイントは4番ですね。火で炙り、冷やされた「鰹」は硬く引き締まります。
硬く引き締まっているので、切りにくいほどです。そのため、味をつけることも一苦労します。そこで、タレがよく染み込ませ、味がつくように、手や包丁で表面をたたく必要があります。この「鰹」に味を馴染ませるという作業が“たたく”由来ということです。
ちなみに、炙る理由としては『食中毒を防ぐ』ためとされていますが…
鰹を火で炙るきっかけとなっているのは、江戸時代に、現在でも鰹で有名な土佐で、鰹の刺身による食中毒が多数発生し、多くの死者が出たというところに遡ります。そして当時の、領主が鰹の生色を禁じてしまいます。しかし、やはり鰹の有名どころでしたので、どうしても食べたいと思う人が多く存在し、どうにかして生の鰹を食べることができないのかと考えた末に、生まれたのが“鰹のたたき”です。
表面を火で炙り、見た目で“生の鰹”ではないですよ!と言って食べたことが始まりとされています。なかなかのアイディアですね…。ところが、この調理方法、実は理にかなっていたのです!
現代でも食べられる生肉“ユッケ”の調理方法の中の“生食用食肉の企画基準”というものを見てみると… 『肉塊を気密性のある容器に入れ、60℃で2分間以上加熱、もしくは同等以上で加熱殺菌後、速やかに4℃いかに冷却すること』とあります。
あれっ、これってなんだか、火であぶり、氷水に入れる「鰹のたたき」の調理方法と同じじゃない?と思いませんか。なんとかして生ではないですよ!とアピールしていた起源が、実は食中毒の防止や、寄生虫を殺す、という処理を行えていたのです!炙るという作業が、誤魔化す以外のメリットがあったのですね! 「鰹のたたき」の“たたき”とは、「鰹」にタレなどの味を馴染ませるために、実際に“たたく”ことが由来。

鯵のたたきの作り方


1 鯵を三枚におろして皮をはぐ。
2 身を包丁で細かく切り刻む。(刻みかたの程度は様々。細切りからペースト状まで)
3 刻んだ身に、ネギや生姜、大葉などを加え包丁などで刻みながら混ぜる。  

ポイントは3番です。刻んだ鯵の身と、薬味をたたくように刻みながら混ぜること。
この、鯵をたたくように細切れにする作業が、鯵の“たたき”の由来ということです。  
ちなみに、「鯵のたたき」と「鯵のなめろう」の違いはというと…

「なめろう」は千葉・房総の郷土料理です。
名前の由来は結構有名ですよね。「なめろう」は盛られた皿まで舐めてしまうほど美味しかったから、というところからきています。
「なめろう」は漁師が発祥と言われており、その作り方が、「鯵のたたき」とは違う点です。
「鯵」を包丁でたたいて細かく刻み薬味と混ぜるところまでは同じなのですが、その先が異なっています。
なめろうは、そこに“味噌”を入れてたたき混ぜます。これは醤油だと船ではこぼれてしまうため“味噌”が使われたといわれています。これを聞くと漁師が作った料理というのも納得できますね。
鯵は鮮度が落ちやすい魚なので、買ったらその日のうちに食べることをオススメします!
「鯵のたたき」の“たたき”とは、鯵と薬味をたたくように刻み混ぜることが由来。

では…マグロのたたきは?


さて、“たたき”の違いがわかったところで質問です。「マグロのたたき」はどっちの“たたき”でしょう?
「マグロのたたき」はいわゆる、「ネギトロ」のことです。マグロを包丁で叩くように細切れにして作りますよね。ですから、これは「鯵のたたき」の方の“たたき”になります。
「鰹」も「鯵」もおいしい季節です。ぜひ、旬を逃さずご賞味ください!

「刺身」と「お造り」の違いはどこにある?

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